こんにちは!nemu(@nemusblog)です。現在国連職員として、西アフリカに勤務しています。
実はちょっと前に、私はイギリスで卵子凍結をしました。
国際協力業界だと、先輩から結構聞くことが多いこの話。
最近は日本も保険が適用されるようになった?とは聞くものの
この業界や海外に住んでいて感じる「卵子凍結に対する認識」は、日本社会の感覚とはちょっと違うのかな?と感じることが事実です。
もちろん、個人的な感覚ですし、どちらが良いとかそういう話をするつもりはありません。
私は自身の環境や価値観で今回これを決めて、自分の中で納得しているので、今回シェアしようと決めました。
今回は、卵子凍結なんて何も知らなかったところから、実際検査のために渡航し、
また凍結のために渡航したり、自己注射をしたり、ホルモンバランスが崩れたり、といろいろあったこの経験が
誰かの役に立ったら、と思いまとめることにしました。
少し前の経験で、当時調べたことを見返しつつ、所々理解不足な箇所もあるかもしれません。
それ違うよ!ということがあれば、ぜひ教えていただけると幸いです。
また、私はこの分野の専門家でも何でもないです。あくまで自分で学ぶ中で考えたことや実際の経験を中心にまとめています。
Contents
卵子凍結は、社会的適応と医学的適応がある
一般的に卵子凍結というと、比較的医学的適応の卵子凍結についての話を聞くことが多い印象です。
病気の治療などで妊娠に影響が出る可能性がある場合に、事前に卵子を凍結しておく、という選択。
一方、社会的適応というのは将来の妊娠の選択肢の一つとして卵子凍結を行うこと。
今はまだ結婚がわからない、高齢になって妊娠が難しくなる前に、、といった理由で、特に女性の社会参加が増えてから話題になることが出てきた印象です。
今回、私は後者の社会的適応に当てはまります。
そして、卵子凍結をする理由が後者の「今はまだ結婚が」「仕事が」「妊娠なんて」という理由なのであれば、
私は早い方が良いと考えています。
卵子凍結のインタビューなどを見ると30代後半の人が多いですが、私は自分でこの分野について学ぶ中で
下記の理由から早い方が良いと考え、それに加えて個人的な事情も踏まえ、20代後半で卵子凍結を行う選択をしました。
①卵子の質が落ちてくる
妊娠率は20代後半から少しずつ低下して、35歳からはそのスピードも増すと言われています。
その理由の一つは、妊娠する力を持つ卵子の数が減ってくるから。
年齢が若いほど質が良い卵子を多く採卵できて、将来の妊娠の確率を高められるというのは気にしなきゃいけないな、と思いました。
②採取できる卵子の数が減ってくる
人によって現時点で卵子の数が異なり、卵子の数自体が歳を重ねると減っていきます。
また、卵子凍結を行なっていても年齢を重ねると妊娠が難しくなること、例えば38歳で1人の子どもを産むには25~30個の卵子が必要で、20代なら20個以上、30代前半でも30個以上、、などと必要になってくるのに
採れる卵子の数自体も年齢を重ねると減ってくることなども踏まえて、早めに行うことを決めました。
実際に私は元々興味があったとかいうわけではなく、不妊検査が保険適用になってるし受けてみようかな、という程度で(ただの…節約思考…)受けてみたことをきっかけに
この家族計画?について考えるようになりました。
【海外で卵子凍結】「子どもも結婚も未定」な28歳の私が、ロンドンで不妊検査を受けたら。ちなみに、結果が悪かったとかいうわけではないのですが、これをきっかけに勉強する中で
若い今の時期って貴重なのでは?仕事が優先と言って諸々放置するべきではないのでは?と思い、一歩踏み出してみることにしました。
クリニック選び
私はこの分野に関してはイギリスで一番大きなクリニックを選びました。
Google reviewなども細かく見て評価が良かったこと、スタッフの対応などが良かったこと、
ブランチがロンドン内に多くあって通院しやすかったこと、
また当時はイギリスにずっと滞在しているわけではなかったので、海外渡航に合わせてスケジュールを組んでくれることなどが決め手でした。
ちなみにイギリスでは、Human Fertilisation and Embryology Authority: HFEAの認可を受けた機関でないとこのような施術はできなかったと記憶しています。その辺りも確認しました。
海外渡航からの卵子凍結スケジュール
①(前年夏)渡航・不妊検査
まず、この当時は卵子凍結を見据えていたわけではないけれど、保険利くしやってみようか、程度で不妊検査を実施。
【海外で卵子凍結】「子どもも結婚も未定」な28歳の私が、ロンドンで不妊検査を受けたら。ここでは血液検査、尿検査のほか、骨盤内超音波検査も全部やってもらいます。全部で£400程度だった記憶。含まれていたのは以下の項目。
- Pelvic ultrasound scan
- AMH blood test
- Clinical advice
- Review consultation
- Counselling
ホルモン値、卵巣機能、卵子の数(AMH値)などを調べてもらいます。
ちなみに、当たり前ですが英語の専門用語がばんばん出てくるので、ある程度予習していきました。
②コンサルテーション
クリニックとカウンセリングを行い、疑問点などをここで全部聞きます。
私は採れる卵子の数や将来の妊娠のリスク、将来の自分の子どもへのリスクなどを聞きました。
③同意書の記入
卵子凍結を行うことを決めたら、国が指定している同意書などを記入していきます。
もちろん今回はイギリスの法律に沿う形になるので、
- 最大何年まで保存できるのか
- 使いたい時はどうすれば良いのか
- 成熟していない卵子を研究に使うことは同意するか
- もし凍結を辞める場合はどういった扱いにするか
といった事項を確認していきます。
私はこの段階で、本当に進めるかどうか数ヶ月悩みました。
こんなに大きな決め事をするだけの、何か切羽詰まった理由が自分にあるわけではないと思っていた(=卵子凍結には、「しなければならない」重大で緊急の理由が必要だと思っていた)からです。
結局、最終的に後押しとなったのは、友達と何気なくこのトピックを話していた時に
「卵子凍結をした後の自分」を想像して、なんとなくの不安やプレッシャーが消えて、自分らしい人生選択がしやすくなりそうだな、と思ったからでした。
④(翌年2月)渡航
ジカウイルス検査
業務などを調整し、1カ月で全てのプロセスを終えてもらうというのをお願いして再渡航。
滞在期間、いつ何をするのか?というのはクリニックが全部組んでくれます。
この場合、イギリスはジカウイルス感染の可能性がある国から渡航する場合は、採卵プロセス開始の前にウイルス検査をする必要があり
イギリスに着いた翌日に尿検査を行い、2週間ほど待って陰性検査が出てから開始しました。
ジカウイルス感染可能性国から来る人は、そこも調整した上でスケジュールを組むことになります。
Baseline scan
渡航して約2週間後にBaseline scanがあります。これは不妊検査時の超音波検査のようなもので
お医者さんが胎内に問題はないかといった点を見てくれます(wいやたぶんもっと色々見てるんだけど私的にはそういうことでした)。
Baseline scanが問題なければ、ついに!ホルモン自己注射が始まります。
看護師さんに呼ばれて、どの注射をいつ打つか、一緒に練習までします。
それまでの検査結果や身長体重に合わせて、何mlをいつ打つか、といった説明があった後に、
お腹に見立てた小さな針台?を自身のお腹にくっつけて、注射のデモンストレーションを一緒にしました。
ちなみに針は医療針で家で捨てれないので、一緒に針用ゴミ箱ももらいます。大量のホルモン注射液と針、そしてゴミ箱を持って帰り、その日から自己注射が始まります。
これは私が最初知らなかったことなので、基本的なのですが伝えると
卵子は通常月に1個作られて生理で外に出されますが、ホルモン注射をするとそれが1個ではなく、何十個もポコポコ出てきます。
その中から、一定以上の大きさに成熟した卵子のみを手術で取って凍結するのが卵子凍結の簡単な流れです。
普段1個しかできない卵子が何個もできるので、お腹の普段膨らまない場所(子宮)がぷくっと膨らんできて、ちょっとずつ圧迫感が出てきます。
3−4回の通院
そこから4−5日毎に計2回、その後2−3日毎に計2回、合計4回ほど通院します。
その度に胎内の様子をお医者さんに見てもらって、モニターを使ってそれぞれの卵子の大きさを測っていきます。
看護師さんがその結果を見せてくれたのですが、卵子の数とそれぞれの大きさがグラフで示されていて
通院を重ねる度に、卵子の総数と基準値に達した卵子の数が増えていっていました。
ここで育つ卵子の数も、人によって違いがあるようです。
私は超健康体だったようで、もうちょっといける!いこ!と推されて(?)結果たくさん採取することができました。めでたし。
私は3回目の通院の際に、ホルモン剤の量を増やした記憶です。それまでは夜だけだったけど、朝にも追加、、のような。
状態に合わせて、クリニックの方が調整してくれます。
基準値に達した(大きく成熟した)卵子の数が一定数になれば、日程を決めて採卵を行います。
採卵前24時間
確か24時間前だったと思うのですが、最後のTrigger剤となる別の注射を入れます。
そこからはもう通常のホルモン注射はせず、身体に負担をかけないように過ごします。
驚いたのは、この時期はネイルも不可でした。ネイルの匂いが卵子に影響を与えるようです。
採卵当日
仕事の関係もあって、早めに終わらせたかったので朝一の採卵でお願いしてもらうことに。
前日夜から何も飲んだり食べたりできず、水さえもだめだった記憶。
病院についたら、待合室で不妊治療中のカップルや卵子凍結前の他の女性の方にも会いました。
病室の準備ができたら入室し、着替えて順番を待ちます。
麻酔医の方が麻酔を準備するために体重を聞きにきてくれました。ちなみに全身麻酔です。
準備ができたら手術室へ。本人確認をして、手術台に乗ったら麻酔が入りすぐに意識が飛びました。
それまでは「日本人〜!日本の食べ物が〜!京都〜!」云々、イギリスあるあるのコミュ力高いお医者さん看護師さんがたくさん話して気を紛らわせてくれました。
手術は確か30分くらいで終わったかも。誰に運ばれたのか、気づいたら手術台ではなく病室のベッドで目が覚めました。でもめちゃくちゃ眠かった。
持ってきたバブルティーと、もらったクッキーなどを食べて、着替えて終了。
ちなみに、採卵後1人で帰ることはできず、事前に申請した付き添い人が迎えに来ることになります。家族かパートナーなど。
私は彼に仕事を調整してもらい、病院まで迎えに来てもらいました。
その後
翌日以降に、結果何個採卵できたのか連絡がもらえます。
もちろん将来の妊娠に備えて、なので数は多い方が良いですが、思っていた数じゃなかった!と狼狽えてしまう人もいるらしく
私のクリニックでは翌日以降に電話かメールで確認する形でした。
その後、翌日と1カ月後に体調等問題ないか、看護師さんから電話がきます。生理などがちゃんと戻ってきたか、等伝えました。
また、採卵後は胎内が少し傷ついている可能性があるのと、全身麻酔で身体への負担はかかっているので、数日ちょっと体調は安定しませんでした。
ただ、全てのプロセスを通じて、特に仕事を休んだりすることはなく、通常通り仕事も続けられたのはありがたかったです。
卵子凍結・よく聞かれたこと
なぜ日本ではなくイギリスで行ったのか
これは個人的な話になりますが、当時生活のベースがイギリスにあったこと、
費用面で抑えられたこと、社会的適応卵子凍結への社会全体での理解が高いと感じたことが理由です。
イギリスでは、例えばピルが保険適用で無料だったり、独身でも養子を持つことができたり、同性での結婚が認められていたりと(すみません、全部大切なトピックですが今回は主旨ではないので流します)、
こういったトピックで様々な意見が飛び交う日本に比べて
自分らしい生き方を選択しやすい社会だと個人的には思っていて、私はそれがイギリスのとても好きなところでもあったりします。
だから、こういった段階での卵子凍結も気持ち的にとてもやりやすかったです。
【祝!英国生活1年】憧れの現地就職からイギリスワーホリの現実まで、1年過ごして感じたこと。其々の選択や権利を守るためのルールがあり仕組みが整っていることは、卵子凍結という長い将来を見据えた選択をする際に、とても安心できると感じました。
自己注射の痛みは?
自分で身体に針を刺すなんて!と思っていた自己注射でしたが、針がとても細いので実際痛いことはほとんどなかったです。
本当は彼にお願いしたかったけれど、自分でやった方が感覚もわかるし結果安心でした。
だんだん膨らむお腹に注射し続けるのはちょっと心が痛かったです。笑
自己注射する前はどこに!?どうやって刺すの!?等不安でしたが、
クリニックで練習できるし、おへその下の右左交互に、という程度の決まりだったので結果Easyでした。
卵子凍結をすれば、安心なのか?
これは、最初にも述べましたが、そんなことはなさそうです。
専門家でも何でもない私が勉強した限りだと、おそらく結局卵子の質(凍結によって止まる)×妊娠の身体の年齢(止められない)が結局妊娠できるか、に関わってくるので
たくさん凍結してればいくつになっても問題なく妊娠出産できるか、というとそうではなさそう。
ただ、いくつで妊娠したいかによって、それまでに保存しておくべく卵子の数というのも変わってくるというとのことなので、
私は今回の経験に満足しているので、またやっても良いかなと思います。
まとめ
このような話題はセンシティブになりがちで、特に今回のように「年齢的に厳しいわけでも、不妊治療中なわけでもない」場合の卵子凍結については、正直意見も様々だと思います。
今回、なぜ卵子凍結をすることを決めたか、個人的な細かい理由までは伝えていないのですが(目的はプロセスをシェアすることでした)、
どんな選択でも、自分が納得でき、自分自身が生きやすくなるのであれば、それが一番大切なことだと思っています。
28歳で自分を認められたら、「30代は生きやすい」の意味が見えてきた後悔してもどうしようもできないこと、誰も責任を取ってくれないことがたくさんあり、
20代のたくさんの機会を前にいっぱいいっぱいになってる今でも時間は変わらず過ぎていってしまう(泣)ので、知ることで選択が増えて、それが良い結果に繋がったらいいのかな、と思っています。